平成18年度 宮城県内の事業所における生活習慣病予防対策と勤労者の運動習慣の実態に関する調査


主任研究者
宮城産業保健総合支援センター所長
安田 恒人
共同研究者
宮城産業保健総合支援センター相談員
福嶋 嘉子


宮城大学 看護学部
安齋 由貴子



佐々木久美子



佐藤 憲子



酒井 太一



高野 英恵
宮城産業保健総合支援センター所長甘糟 元
共同研究者宮城産業保健総合支援センター相談員伊東 市男
加美山茂利
小松 昭文
丹野 憲二

1 はじめに

本研究では、宮城県内の事業所における生活習慣病予防への取り組みの実態について調査し、また、運動習慣に焦点を当てて勤労者の生活実態を把握することにより、今後の産業保健活動に必要な対策について考察した。

2 対象と方法

調査1:事業所における生活習慣病予防対策の実態調査

  調査対象は、宮城産業保健総合支援センターに登録している県内の事業所約2000件から、500件を無作為抽出した。自記式質問紙を対象事業所に郵送にて送付・回収した。有効回答数は185件(37%)であった。調査内容は、事業所の概要、産業保健スタッフの有無、生活習慣病予防対策の実施状況等である。

 調査2:勤労者の運動に焦点をあてた生活習慣実態調査

宮城産業保健総合支援センターの研修会において、参加者に調査の具体的な説明を行い、調査協力の依頼をした。その結果、3事業所計65名の参加があった。調査内容は、(1)1週間のライフコーダ装着、(2)日常生活、運動行動の準備性、自己効力感等の質問紙、(3)BMI、体脂肪率、腹囲等の計測である。対象者には、研究の要旨、研究対象者の匿名保持、参加の自由意思等の倫理的配慮について説明し、承諾書に同意が得られた者のみを分析対象とした。

3 調査結果

調査1

 

 産業医や衛生管理者などの産業保健スタッフに加えてさらに看護職が配置された事業所(以下、A群)は30(16%)、産業医や衛生管理者など産業保健スタッフのみで看護職が配置されていない事業所(以下、B群)は118(64%)、産業保健スタッフが全く配置されていない事業所(以下、C群)は37(20%)だった。定期健康診断の平均受診率は、A群とB群は、C群に比べ統計的に有意に平均受診率が高かった。生活習慣病予防対策へのとり組みは図1のとおりであり、「基本的知識の普及」以外の生活習慣病予防対策において、3群間に有意な差があった(p<0.05)。

図1 生活習慣予防対策への取り組み

 調査2

 回答者は、男性55人、女性10人だった。平均年齢は40.9歳で、男性は42.7歳、女性は31.0歳だった。日常生活の状況について、「身体を動かすことが好きである」と回答した人は71%だった。また、「現在、何か運動を行っている」と回答した人は51%だった。

 内臓脂肪型肥満の診断基準(日本肥満学会肥満症診断基準検討委員会)の一つである上半身肥満が疑われる人は26人(43%)で、全て男性だった。男性のみ年齢別に見ると、30-39歳で31%、40-49歳、50歳以上で60%が該当した。

 ライフコーダによる測定結果で、週2000kcalの目標運動量を満たしていない人は52人(80%)だった。 曜日別にみると、平日の方が休日よりも運動量が少ない傾向にあった。また、一日に占める強度別の活動時間を見ると、「無運動」と「微細運動」が一日の大半を占めていた(図2)。

図2 強度別活動時間

 対象者の運動パターンを、運動量(週2000kcal以上)、運動強度(1日に中等度以上の運動を30分以上)を満たしているか否かで4群に分類した。その結果、「運動量不足・運動強度不足」群に分類される者が46人(71%)と最も多かった(図3)。

図3 運動パターンの分類

 4 考察

調査1では、生活習慣病予防のための取り組みにおいて、看護職が配置されていた事業所では、そうでない事業所よりも有意に高く実施されていた。つまり、看護職が配置された事業所では、個別的・集団的アプローチ両方による生活習慣病予防の取り組みが積極的に行われていたことが明らかになった。しかし、産業看護職が配置されている事業所は本調査でも16%にすぎないことは、今後解決すべき課題であると考えられた。

 調査2では、女性は全体の15%でかつ20歳代が7割を占めたことから、本調査に参加した男性の実態を反映した結果となった。研究への参加を呼び掛けて集まった対象者であるため、運動や生活習慣病に対して何らかの関心も持つ人が多いと考えられたが、運動量と運動強度ともに不足しているという運動不足の実態が明らかになった。男性は専門・技術職、女性は事務職が多かったことから、デスクワーク中心の勤労者の場合、特に勤務日である平日に、意識的に活動量を増やすとともに、一定以上の強度を持つ運動を計画的に取り入れていく必要性が示唆された。

4 おわりに

今回の調査では、看護職の配置によって、生活習慣病予防対策が積極的に取り組まれ、かつ計画的な健康管理が行われることが明らかになった。また、勤労者の生活習慣においては、肥満や運動不足の実態が明らかとなり、生活習慣病に対する予防的介入の必要性が改めて強調された。

 最後に、お忙しい中、調査にご協力いただきました事業所および勤労者の皆様に心より感謝申し上げます。

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