平成7年度 宮城県における産業保健の実態
主任研究者 | 宮城産業保健総合支援センター所長 | 甘糟 元 |
共同研究者 | 宮城産業保健総合支援センター相談員 | 伊東 市男 |
同 | 加美山茂利 | |
同 | 小松 昭文 | |
同 | 佐藤 洋 | |
同 | 丹野 憲二 | |
同 | 若狭 一夫 |
1 はじめに
センターにおいては、宮城県内の産業保健活動の現状及びセンターに対する各種支援サービスのニーズを明らかにし、もって、今後の産業保健活動の指針にすること並びに従来宮城県医師会において、昭和52年及び昭和59年に行なわれた県内産業医活動アンケート調査結果と比較し、その後の推移を見ることを目的として、平成7年2月に、労働者規模50人以上の事業場及び産業医を対象にアンケート調査を実施したところですが、この程、その結果がまとめられたので、その概要をお知らせします。
2 調査概要
(1)調査対象
イ 宮城県内の産業医及び労働者50人以上を使用している2,025の事業場に対し「事業場対象産業保健実態調査票」を送付するとともに、同封で当該事業場にも「産業医対象産業保健実態調査票」を送付し、アンケート記入をお願いした。また、上述の事業場に所属しない日本医師会認定産業医235名に対しては、別途同様の「産業医対象産業保健実態調査票」を送付し、記入を依頼した。
ロ 調査対象数及び回答数、回答率
事業場あて発送数 2,025 回答数 690 回答率 34.1%
産業医あて発送数 2,260 回答数 449 回答率 19.9%
(事業場に所属しない日本医師会認定産業医235名を含む。)
(宮城県医師会に登録している認定産業医660名に対する回答率として見れば68%となる。)
(2)調査方法
イ 質問紙によるアンケート調査
ロ 郵送による調査票の配布・回答
(3)調査時期
イ 平成7年2月24日発送、同3月31日締切りで回収
ロ 平成6年12月末日の状況で記入を求めた
3 産業医対象調査結果
(1)産業医の属性
回答率は449名で男性が92%、女性5%、年齢層は40歳未満5%、40歳台20%、50歳台26%、60歳台31%、70歳台が13%であり、50歳以上で約7割を占めていた。産業医としての経験も年齢層の高いほど長い傾向はあるが1年未満でも50歳以上が半数を占め、高年になってから産業医を志す医師も少なくないことを示している。内科系医師が68%を占め、日本医師会認定産業医は72%であった。
(2)産業保健活動の実態
産業医の選任事業場数は一人平均2.6ヶ所で、全国6推進センターの平均値2.7よりやや少ないが宮城県での昭和55年調査の1.9、昭和59年の2.1よりも多く県内事業場数の増加を示している。
また、事業場の労働者規模も昭和52年、59年、平成7年と徐々に増加している。業種は第二次産業が減り、第三次産業に傾いてきた。産業医の事業場への訪問は月1回が33%で最も多く、昭和59年の39%、52年の34%とあまり変化はない。事業場での仕事は「相談又は教育」「職場巡視」「定期健康診断」が各々50%を超え、「医務室」における診療は23%の産業医が行なっているにすぎない。産業医の報酬については、前回に比較しかなり改善されているが、以前として無報酬や盆暮れの贈物程度で終わっている人もある。
産業医活動に当たって医師会に望むことは、「産業医の手引きの作成」「研修会の頻繁な開催」行政に対しては「実情に合った労働衛生行政」を、事業所に対しては「産業医に対する理解」を望む声が多かった。
(3)推進センターのサービスへのニーズ
宮城産業保健総合支援センターを知っている産業医は71%に達し、その支援するサービスを利用したいとする希望も8割に及んでいた。情報誌の配布や図書等の閲覧・貸出し希望が多く、特にビデオの貸出し希望は40%に達していた。産業保健活動の相談内容については、「メンタルヘルスの導入方法」「健康診断の事後措置」が各々35%、「職場巡視の方法」は25%であった。自由回答欄では産業医に対する事業場の紹介、事業場とのトラブルの仲人を希望するものがあった。
4 事業場対象調査結果
(1)事業場の属性
回答のあった690事業場の業種は、サービス業、次いで建設業が多かった。労働者数100人未満及び300人未満がおのおの40%を占め、1,000人以上は2%、14事業場であった。有害業務のあるものは38%で、「深夜業」と「有害化学物質扱い」がおのおの48%、「粉じん発散」は26%であった。
(2)衛生管理の実情
(安全)衛生委員会は78%に設けられ、月1回開催が76%であった。衛生管理者の選任率は85%であり、その大部分は一般事務などを兼務していた。事業場の40%は何らかの形で健康増進対策や快適職場形成対策を行なっていた。産業医の選任率は90%であり、「健康診断の事後措置」「健康相談」が重点業務として行なわれ「職場巡視」は31%であった。事業場の希望も「健康診断の事後措置」や「THP」が多く「健康診断の実施」や「職場巡視」は少なく、産業医側の調査とのくい違いがみられた。
(3)産業保健活動の現状と課題
定期健康診断は99%の事業場で行なっており、「産業医に依頼」が28%「健診機関」が74%であった。特殊健康診断も対象事業場の90%で行なわれており、未実施の理由として挙げられたのは「時間的事情」と、「経済的事情」であった。
定期健康診断以外の健診も76%行なっており、「成人病健診」、「人間ドック」が多い。労働衛生での課題として挙げられたものも「快適職場づくり」、「THP」がこれに次いでいる。「メンタルヘルス」対策は労働者規模が大きくなるほど関心が大きい。問題点は「特にない」が47%を占めたが「産業医の活動時間が少ない」、「産業医、衛生管理者の人材不足」を挙げた事業場も少なくなかった。
(4)推進センターの支援サービスに対するニーズ
センターの認知度は65%で産業医よりは少なかったが、全国6推進センターよりも高かった。利用希望者も83%と産業医のそれと同様であった。支援サービスでは、「情報誌の配布」「図書などの閲覧・貸出」「窓口・実地相談」「事業主セミナー」の順に希望が多かった。希望する図書や機器等ではビデオがもっとも多く、54%の事業場から出されていた。利用したい調査研究では、「健康相談マニュアル」「健康診断マニュアル」「職場巡視用チェックリスト」「健康担当者用教材」の開発が望まれていた。
事業主セミナーのテーマとしては、「成人病対策」が最も多く、「労務管理と衛生管理」「メンタルヘルス」がいずれも半数以上の事業場から出されていた。他の地域で関心の高かった、「企業責任と賠償」は本県では低かった。自由回答で求めた事業場の意見では担当者だけでは動きがとれないので、事業主の認識を労働衛生問題に向けてほしいとするものが、特に中小企業で多かった。また、産業医の報酬の高いこと、人材不足を訴える声も見られた。企業内で健康管理を進めている保健婦・看護婦、衛生管理者等から、情報交換の場として交流会を作って欲しいとの切実な意見も出されていた。
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